本と映画。「砂漠の影絵」と「存在のない子供達」。
石井光太氏のノンフィクション作品は、いつも読んだあと息が苦しくなる。
「砂漠の影絵」は、そんな著者が書いた小説です。なので内容はフィクション。フィクションだから、最後はオールハッピーで終わるはず、とまでは思わないけれど、「そりゃないよ。。。」という気持ちで最後のページを閉じた。
中東イラクで日本人5人が武装組織に拉致される。それまで全く見知らぬ者同士の人質たちの素性、拉致した側の「聖戦旅団」、人質の橋本優樹の家族の心情などが綿密に書かれている。過去、実際に複数の日本人が中東で誘拐され殺害される事件があったので、これがどうしても頭の中をよぎってしまう。
何度も何度も、もうこれは読めない…と本を閉じました。
日本人の人質同士は、放り込まれた汚い牢獄然とした場所で自己紹介し合ったかと思えば自分たちの不運に泣いたり、時に罵り合ったりしてもがき苦しむ。
拉致した側の聖戦旅団もまた自分たちの国が攻撃されていることに怒り、自分たちが平和を取り戻すのだという強い決意が過激なテロに発展していく。彼らもまた平和を渇望している。
日本で待つ家族は、ある日突然「拉致被害者の家族」となり、薄氷を踏む思いで救出を願っているうちにいつのまにか「自己責任」という言葉にまとわりつかれる。
苦しみながら読み進み、想像を超えるそれぞれの苦しみが文字から飛び出して襲いかかられて、読み始めたことを後悔しながらの数日間でした。
石井光太氏の本はいつもこう。もう読んだらあかんな、ていつも思う。ぬるい頭の自分を思い知らされて、自分が本当に平和ボケのバカだと思わされる。でもまたきっと読む。
中東。きっとテレビや新聞で見るイラクやシリア、レバノンはほんの一部で、そしてテロリストや軍隊もほんの一部で、大多数の国民は「毎日を生きる」ために必死で「生きている」のだと思う。諸外国の支援も届かない、彼らは今日も生きるために食べることが出来ただろうか。
彼らが踏んでいる土は何色だろうか。
そんなことを「砂漠の影絵」を読んだあとぼんやりと考えていたら、そんなわたしの前に
「存在のない子供たち」という映画が現れました。
その話はまた次回。